プロが教える医学部予備校の選び方② 【ステルスマーケティング・虚偽記載】
「ステルスマーケティング」という言葉を聞いたことがありますか?
簡単に言えば、広告であることを隠した広告です。有名なところでは通販サイト「Amazon」のレビューにはかなりのステマが紛れ込んでいるようです。
コロナ禍で「Amazonの偽レビュー」が全体の42%に達したという報告
このような「ステマ」「虚偽記載」「誇大広告」 は予備校業界にも存在します。
冷静な状態で見ればこうした広告に引っかかるようなことは無いと思います。
ですが受験の後、心が弱っているときに「なんとか成績を上げたい!」「なんとか我が子を医学部に合格させたい」とすがる思いでそうした広告を見てしまうと人はそれを信じ込んでしまうようです。
すこし話が違うかも知れませんが私は以前、元々明るく冷静な人が身内の方のご病気を直すために、民間療法に傾倒していくの目の当たりにしたことがあります。 人は耐えられないほど辛いことがあったときに冷静ではいられなくなるのだと痛いほど実感しました。
冷静に考えると「ステマ」「虚偽記載」「誇大広告」を行う予備校が生徒と真摯に向き合っているとは思えないはずなのですが、毎年かなり多くの生徒を集めています。そして当たり前ですが、そうした予備校に通った生徒は成績を伸ばせず、医師への道を諦めていきます。
今回はそうした方を少しでも減らすために、気をつけたい予備校業界の広告にはどのようなものがあるのか、分かりやすくストーリー仕立てでお伝えしてみようと思います。
やってしまいがちな予備校選び
春から2浪目になる息子さんを持つお母さんの話です。
1浪目は周りの友達と一緒に通えるという理由で大手予備校を選んだのですが、結局成績は上がらず、受験した全ての大学で一次試験も通りませんでした。「今年こそ合格させてあげたい」との思いから、かなり値は張りますが医学部予備校を検討しています。
インターネットを検索してみると、医学部予備校には大規模なところから少人数のところまで相当な数の予備校があることが分かりました。嬉しいことに、どの予備校のホームページにも凄まじい合格実績が書いてあります。(※1)「この中から息子に合う予備校を選ぶことが出来れば、今年はうちの子も合格できるかも知れない」安堵感が広がります。
調べているうちに、医学部予備校のランキングサイトでいつも上位にランクインしている予備校があることに気が付きました。複数の口コミサイトで好意的な書き込みもあります。その予備校のホームページには調査会社のランキングでもNo.1を取ったとか、雑誌の取材を受けたとか書いてあり信頼出来そうです!(※2)
医学部予備校の中ではそこまで大手ではなさそうですが、その分親身になってくれそうですし、合格実績、合格体験記も豊富で、それによると再受験生や偏差値30台からでも1年で医学部に合格出来たと書いてあります。(※3)
詳しく話を聞いてみたいと思い説明会に行きました。
代表の方が熱心に話をしてくれましたし、お子さんも体験授業が分かりやすかったと喜んでいます。
良い予備校が見つかったと安堵し、安心して任せることにしました。
………
…
残念ながらこのお母さんは間違った予備校を選んでしまったようです。
順に解説していきます。
1.「延べ人数」表記、「一次合格者」を含めた表記
医学部予備校の合格実績は本当に分かりにくいです。それは「延べ人数」や「一次合格」などを用いて実際よりも大きく見せることが慣習化してしまっていることが原因です。
例えば、ある医学部予備校に50人の生徒がいたとしましょう。
そのうち12人が1次試験を通過し、その12人の中の5名が2次試験も通過して医学部に進学出来たとします。このとき実際の合格率は10%のはずです。
ですが、その1次試験に合格した生徒が平均して4校に「1次合格」していたとすると「一次合格」と「延べ人数」のマジックで、合格率は96%と書けてしまいます!
参考記事:医学部受験の闇「予備校の合格率が9割」の恐ろしいカラクリ
また、稀に「元々地頭の良いけれど、部活に打ち込んでいたなどの理由で勉強していなかっただけの生徒」が入学してくることがあります。偏差値は40台、科目によっては30台であることもあります。ですが、それでも地頭の良い生徒はそこから医学部に合格していきます。当然ほとんどの生徒はこの生徒のようには伸びませんが、予備校は「偏差値30台からでもうちなら合格できる!」と書くことが出来てしまいます。
2.ステルスマーケティング
■ランキングサイト
インターネットを検索すると医学部予備校のランキングサイトが出てきます。
これってよく考える不思議ですよね?予備校のランキングなんてどうやって作ったんでしょう?大阪府内の医学部予備校を一軒一軒しっかりと評価して回ろうとしたら一体どれだけの年月がかかるのか、考えただけでも気が遠くなります。
実は、これは調査結果ではなく広告です。月に数万円もしくは一括で数百万円払うと自分の予備校を上位に表示するランキングサイトが作れます。
※是非一度「医学部予備校 ランキング ステマ」などでご検索下さい。
私のところにもよく営業の電話がかかってきます。営業の方曰く、こうしたランキングサイト型の広告はやはり効果がかなり高いようです。
■口コミ
冒頭のAmazonの偽レビューのように、業者の方に頼めばgoogleマップを始めとする様々な口コミサイトに、自分の予備校を持ち上げて他の予備校を落とす口コミも書いてくれるそうです。こちらもランキングサイトと同じく営業の電話がかかってきます。
■No.1調査
医学部予備校のランキングサイトと似ているのですが、「医学部予備校3冠!」などと書いてある「No.1調査」というものもあります。
ピンと来ない方は「No.1調査」などで検索してみて下さい。これも一見すると調査結果の様に見えますが、広告です。どんなランキングでも1位になれます。
3.合格実績の詐称、合格体験記の自作
にわかには信じがたい話だと思いますが、2でご紹介したステルスマーケティングをする予備校の中には、全く虚偽の合格実績を記載する予備校があります。合格体験記もアルバイトのスタッフに手書きで書かせ、それらしくホームページに載せています。以前勤務してしまっていた医学部予備校でそうした行為を目撃しました。そうした予備校はやはり、指導の面でも問題の多い予備校でした。
まとめ
予備校選びは難しいと思います。ですが表面的な情報だけで決めず、しっかりと吟味なさって下さい。
また、もし万が一誤った予備校に入ってしまったときは、おかしいと気づいたタイミングで別の予備校に移られることをお勧めします。
面談で決まりきったことしか言わなかったり、ホームページに書いてあることと実態がかけ離れていたり、 保護者に対して言うことと生徒に対して言うことがまるで違ったり、 講師がその予備校に対して不信感を示していたり、そんな予備校に長く通ってしまっては取り返しがつかなくなります。
ちなみに、この記事を書きながら思い浮かべているステマを行う予備校は大阪府内に私が知っているだけで3校あります。ホームページにすごく良いことが書いてあったもので、つい一緒に働きたいと思って勤めてしまいましたが、実態はとても残念でしたので直ぐに辞めました。 皆様はくれぐれもお気をつけ下さい。
今回は以上になります。
少しでも予備校選びのお役に立てていれば嬉しく思います。
皆様の後悔のない予備校選びを応援しています!